こんにちは、akaruです。
その厚さから「鈍器本」や「レンガ本」などの異名を持つ「百鬼夜行」シリーズ。
昨年2023年9月には17年ぶりの最新作となる『鵼の碑』が発売されました。
本記事では、シリーズ第2作である『魍魎の匣』のあらすじと感想をご紹介します。
コミカライズもされています。
- 厚めの本が好き
- 蘊蓄が好き
- ちょっと不気味な話が好き
- シリーズものが好き
シリーズ第1作『姑獲鳥の夏』のあらすじと感想はこちらです。
『魍魎の匣』作品概要
『魍魎の匣』作中の時期
昭和27年(1952年)8月~10月
『魍魎の匣』あらすじ
中央線武蔵小金井駅のホームから女子中学生・柚木加菜子が転落し、列車に轢かれた。
転落から半月ほど後、唯一の目撃者である加菜子の友人・楠本頼子が「加菜子は黒い服を着た男に突き落とされた」という証言をする。
それは巷で騒がれている連続バラバラ殺人事件との関連を示唆を示唆するものだった。
古本屋店主兼陰陽師である京極堂が憑き物落としで事件を解き明かすシリーズ第2弾。
『魍魎の匣』感想
犯罪機会論
蘊蓄パートはボリュームが大きいので、残念ながら挫折してしまう方もいるかもしれません。
しかし、後になるにつれて物語を理解するカギとなっていることがわかります。
『魍魎の匣』の一番のポイントは、犯罪はどういった状況で起きるのかということです。
…動機だけなら誰にだってあるのだ。いや、犯罪の計画だって皆立てている。実行しないだけだ。
犯罪機会論が近いのでしょうか。
京極堂は、犯罪は動機や生来持つ性質によってではなく、社会条件・環境条件と犯罪が可能になる機会を得たことで起こると説きます。
実行するかどうかは、その機会が訪れるか否かという違いだけということですね。
そんなはずはないだろうと、今の私は言えます。
しかし、単純にまだその瞬間が訪れていないだけなのかもしれません。
とても恐ろしく、不安な気持ちになります。
魍魎
形三歳の小兒の如し、色は赤黑し、目赤く、耳長く、髪うるはし。このんで亡者の肝を食ふと云。
『今昔續百鬼・巻之下・明』
しかし、イメージとは裏腹に妖怪は出て来ません。
その妖怪に関連したり想起させる事件が作中で起きます。
憑き物落とし「穢れ封じ御筥様」が封じる対象として魍魎が出て来ます。
「魑魅魍魎」だと化け物の総称ですが、単に「魍魎」とすると意味が異なるようです。
京極堂は、魍魎とは本当は何だかわからないけれど、いつの間にかけだものにされてしまったものだと言います。
本作『魍魎の匣』は複数の事件があり、視点も変わります。
掴めそうで掴めない。そんなもどかしさを感じます。
憑き物落とし
ミステリーに分類されますが、本格推理小説のようなものとは異なっています。
しかし、京極堂の語りで種明かしがされていく様はまさにカタルシスです。
『魍魎の匣』では、合計5つの事件で構成されています。
ポイントの一つは既に書いた通り、犯罪が起きる状況です。
前作『姑獲鳥の夏』もそうでしたが、本来犯人といわれる立ち位置にも関わらず、完全な悪人である人物はいませんでした。
京極堂が、犯罪は社会が作るものだと言うシーンがあります。
同調圧力とは違いますが、社会性や一般的な感覚を持つことは大切なのだと思います。
また、事件を紐とくためには「順番」と「繋げて考えること・分けて考えること」も大切な要素です。
類似点がないから別物ではありません。
反対に、類似点があるから関連があるわけではありません。
日常生活や人間関係、仕事でも気を付けなければならない考え方だと思います。
『魍魎の匣』の次の作品
『魍魎の匣』の次の作品は『狂骨の夢』です。
『狂骨の夢』のあらすじと感想はこちらです。