【魂とは何か】『屍者の帝国』伊藤計劃・円城塔【あらすじと感想】

日本の小説
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こんにちは、akaruです。

劇場アニメ化もされた、伊藤計劃と円城塔による『屍者の帝国』。

ストーリーも面白いのですが、著名な作品のキャラクターが登場するパスティーシュ小説であることも読書好きにはたまりません。

本記事では伊藤計劃と円城塔による『屍者の帝国』のあらすじと感想をご紹介します。

『屍者の帝国』をおすすめできるのはこんな人
  • スチームパンクSFが好き
  • パスティーシュが好き
  • クロスオーバーものが好き

『屍者の帝国』作品概要

  • 著者:伊藤計劃、円城塔
  • 発行:2012年
  • ジャンル:スチームパンクSF
  • 受賞など:第33回日本SF大賞・特別賞、第44回星雲賞日本長編部門受賞、第2回SUGOI JAPAN Awardエンタメ小説部門1位。第10回本屋大賞ノミネート。

『屍者の帝国』登場人物

ウォルシンガム機関

  • ジョン・H・ワトソン
  • フライデー
  • フレデリック・ギュスターヴ・バーナビー
  • エイブラハム・ヴァン・ヘルシング
  • ジャック・セワード
  • M

ロシア

  • アレクセイ・ヒョードロヴィチ・カラマーゾフ
  • ニコライ・クラソートキン
  • ニコライ・ヒョードロフ
  • ドミートリイ・ヒョードロヴィチ・カラマーゾフ

ピンカートン

  • ハダリー
  • レット・バトラー

最初の屍者

  • ザ・ワン

『屍者の帝国』あらすじ

労働力としての屍者

ヴィクター・フランケンシュタインが最初の屍者を生み出してから約100年後の、19世紀末。

死者に霊素を上書きして復活させるこの屍者化の技術は普及し、世界の産業や文明は屍者によって支えられていた。

ワトソン

ジョン・H・ワトソンはロンドン大学の医学生である。

時代はアフガン戦争中であり、愛国心からワトソンは卒業したら軍医になるつもりでいた。

そこへ指導教官であるジャック・セワードとその師であるエイブラハム・ヴァン・ヘルシングの紹介により、政府の諜報機関であるウォルシンガム機関に招き入れられる。

ワトソンはウォルシンガムから通訳兼記録係として青年型屍者のフライデーを貸与され、ロンドンを離れる。

屍者の王国

ワトソンに与えられた任務は、アフガニスタンでの諜報活動であった。

ロシアの軍事顧問団から新型屍者を率いて脱走し、アフガニスタン北方に『屍者の王国』を築こうとしている人物がいるとの情報があったのだ。

ウォルシンガムの調査によると、その男の名はアレクセイ・ヒョードロヴィチ・カラマーゾフ。

ワトソンはフライデー、ウォルシンガムの一員バーナビー、ロシアの諜報員クラソートキンとともに『屍者の王国』を目指す。

新型屍者

ワトソンたちが見当をつけた場所に、カラマーゾフはいた。

カラマーゾフは失われたはずのフランケンシュタイン博士の手記を発見したことや、オリジナルであるザ・ワンについて話す。

しかし翌朝、カラマーゾフは屍者化して発見される。

それは彼らの、国家によるフランケンシュタイン三原則の違反の告発であった。

同時に、ワトソンたちは新型屍者の秘密を知る。

ワトソンたちは拡散を防ぐため、持ち出された手記、そしてザ・ワンを追う。

『屍者の帝国』感想

伊藤計劃の遺稿を、円城塔が完成させた本作品。

若干の読みにくさは否めませんが、個人的には世界観や展開が好みで何度も再読しています。

屍者

時代は19世紀末。

現実世界と異なり、この世界では死体に霊素を上書きして復活させる技術が普及しています。

ゾンビを労働力や兵士として使役しているのですから、不気味でもありシュールでもありますね。

しかし「屍者」を「AI」に置き換えると、この物語も一気に身近に感じられます。

「人間とAIを分けるものは何か?」

「AIは魂(感情)を持つのか?」

パスティーシュ、クロスオーバー

登場人物が19世紀頃の著名な作品や実在人物がモデルになっていることもこの作品の魅力の一つです。

主要キャラはもちろん、地の文にちょろっとだけ登場する人物や設定などもあってとても楽しいです。

モデルの原作も読みたくなりますね。